せーので跳べば笑顔がこぼれる。日高龍太郎さんが回すダブルダッチの輪!
びゅんびゅんと回る2本の縄。その中で軽やかに跳ぶ。
そのスポーツの名前はダブルダッチ。
今回はその魅力に憑りつかれ、現在はダブルダッチインストラクターとして精力的な活動を見せる日高龍太郎さんに会いに行きました。
スイスでの運命の出会いや、暗黒期を超えてきた現在、そして沢山の人に伝えたい笑顔こぼれるダブルダッチの魅力について、じっくりと熱く語って頂きました。
- Profile: 日高龍太郎
- ダブルダッチインストラクターとして江別、恵庭、札幌等、多くの場所でダブルダッチを教えている。レッスンや自分の練習以外にも、ダブルダッチを広めるためのイベントを自ら主催して仲間を増やしている。パフォーマーチーム『SCRAMBLE GARAGE』代表、『北海道ダブルダッチ協会』会長。
見て楽しい!跳んで楽しい!ダブルダッチとの出会いはスイスで
僕生まれは宮崎で、育ちは東京、そこから高校はスイスの日本人学校行ったんです。
― スイス!?
そうです。ハイジに出てくるみたいな山奥の学校でした。そこにたまたまダブルダッチが大好きな日本人の先生が来たんですよ。
その先生からいきなり「俺が教えるのは数学じゃなくてダブルダッチだ」 って言われて。最初何言ってんだって思ったんですけど、やってみたらすごい楽しくて。そこからがっつりはまっちゃって自分でサークル作ったりもしました。
― スイスだけでもびっくりですが、その先生にもびっくりですね…。
その先生はダブルダッチが好き過ぎて、縄がその場になくても仲間と手の動きだけで技の研究してたり平気で5時間とか縄の話をしています。あの先生の変人さには勝てないっすね。
― でも日高さんも教えてる子供達からは同じように思われてるかもしれませんよ。
はっはっは、やだなぁ。…でも思われてるかもしれない。
スイスではもう一つ思い出深い出来事があって。
その高校でボスニア・ヘルツェゴビナっていう内戦があった国にボランティアに行く機会があって。物資や食料を運ぶのが仕事でしたが、休憩時間に現地の子供やご家族と一緒に遊んだりもするんです。
そこで皆でダブルダッチをやったら、跳んでる子はもちろん見ている周りの人たちもすごく楽しそうだったんですよね。例えばルールがわからないとスポーツって見てても面白くなかったりするじゃないですか。
でもダブルダッチは何も知らなくても、やってる方も見てる方も楽しくなれて最強だなと思って。
このスポーツは一生続けたいなと思いました。
― 私も動画で見たんですがすごい小さな子でも楽しそうに跳んでました。「あ、跳べた!」って笑顔がきらきらしていて。
ダブルダッチって小さい子は年中さんくらいから80歳くらいまでは跳べますからね!
― 今のように仕事として取り組むきっかけは何だったんですか?
僕元々は獣医さんになりたかったんですよ。
それで酪農学園大学に入ったんですけど、勉強やバイト、またダブルダッチサークル作ったりと、やりたい事全部やろうとして自分で過密スケジュールの毎日にして身体壊しちゃったんですよね。もうほんとバカで。
結構長い間、僕は暗黒期って呼んでるんですけど何もしていない期間がありました。でもダブルダッチだけはまた徐々に始められたんですよ。
獣医さんへの道をすっぱりやめた後、たまたま募集してた学童保育の仕事の中で子供たちにダブルダッチを教えたり、週末は新しく社会人サークルを作ってみたり、そんな生活を3年くらい続けているうちにまた仲間が増えていって。
このままでも楽しいけど、僕はダブルダッチにだいぶ救われた部分があったので恩返ししたいな、みたいな欲が出てきたんです。
それで1回挑戦してみようと思って、専門学校に入ってしっかりスポーツの勉強をした後で、ダブルダッチインストラクターとして平日にも教えられるような環境を作ったっていうのがこれまでの所です。
実は縄跳びよりも簡単!僕が回せば誰でも跳べる
― ダブルダッチを始めたい時は何か特別な縄が必要ですか?
いや、登山ロープとかでも何でもOKです。もちろんやりやすい縄は色々違いがありますけど。
これは日本ダブルダッチ協会のちょっと太めのやつです。
このロープの先を結んじゃって、そこに指を引っ掛けて持って回します。長さは3.6mくらいっすかね。
― そういう縄が2本あればばっちり。
ばっちりです。ただ自分達だけでいきなり回すと、最初は結構難しいと思います。
時々なんか勝手に上手く回るっていう人もいるんですけど、それは二人の相性がめっちゃ良い場合っすね。
ホント仲良くないとダメで、チーム内で喧嘩してるときはパフォーマンスもボロボロになりますよ。
― スキルも必要だけど、お互いの息を合わせる方が大事なんですね。
そっちの方が大切です。お互いに跳ばそうっていう思いやりが無いと。
でも実は、ダブルダッチって縄跳びよりも跳びやすいんです。
― へえ!
縄跳びってめちゃくちゃ難しい事してるんですよ。
跳びながら自分の手を動かして、跳ぶタイミングと縄を回すタイミング調整して…。後ろ跳びの時の手首の動作なんて日常ではまずやらない動作ですし。
― 確かに。考えてみれば複雑ですね。
それに比べてダブルダッチは跳ぶ時は跳ぶだけなんです。
一見速そうに見えても同じリズムで跳ぶだけで跳べるんです。それが楽しいんですよ。気持ち良くって。
リズムさえわかれば跳べるので例えば視力の無い方でも跳べます。実際に教えてる方が居るんですけど、音で跳べるんですよ。
― 私すさまじく運動音痴なんですけど…。
お。じゃあ後でやりましょう。僕が跳ばせられない人は5000人に1人くらいですよ。
でも、やってるうちに回し手が最強ってことに気付いてくるんですよ。回しはホントに奥が深くて。跳ぶよりもこっちが難しい。
小学生に教えてても跳ぶのは直ぐに出来るんですけど、自分達で回すようになるためには時間がかかりますね。
あと、回しにもパフォーマンスとしてカッコよく見せる為の色んな技があるんですよ。
それもホントに面白くて。僕今は跳ぶより回す方がうまい人です。
一人じゃないから続けられている
ダブルダッチは一人じゃ出来ないってところが僕は凄い楽しくて。
一人じゃ出来ないから面倒くさいスポーツっちゃ面倒くさいスポーツですけど、一人じゃ出来ないからこそ、今まで続けているっていうのはあると思います。
― 先程からお話を伺っていると、日高さんはずっと新しい場を作ってきてますよね。
そうなんですよ。何故だかダブルダッチでは自分で作らないといけない状況がいやに多くて…。
最近は大会の運営やスポンサー集めも全部自分たちでやっているので、誰かやってくれる人が居たらお願いしたいくらいなんですよ…。
― 無かったら諦めるんじゃなくて、自分で作ってしまう行動力が凄いです。現在教えているクラブはどんな感じなんですか?
例えば土曜日に月2回教えているクラブは家族に向けて教えています。
最初は子供を跳ばせてあげるために両親が回すんですけど、ある程度出来るようになってきたら、子供が回してお父さんやお母さん跳んだりもします。
― それ素敵ですね。子供に教えるとかやらせてあげるっていうのは出来ますけど、同じ目線で一緒に出来るってあまりないですよね。
そこがホントにめちゃくちゃ面白いですね。親子でステップバトルとかね。
その家族は僕らが運営している大会に、自分たちでパフォーマンスを作って参加したりもします。その大会には僕も出場したんですが前回はその家族に負けてしまったんですよ。
― なんと(笑)
負けました。そうなんです。
その大会は本州の大会とは違って、技術よりもチームごとのコンセプトをダブルダッチで表現出来たチームが勝ちってルールなんです。そうすることで誰にでも勝つチャンスがあるようにしていて。
大会はこんな感じなんですよ。
― おぉ、動画で見ると動きが思った以上にキレキレでかっこいいです!小さい子供が回してお父さんが跳んでるとことか、身長差がこれだけあるのにすごいですね。
こんな風に子供2人が回して夫婦で飛んだりね。ここのチームは『家族愛』がテーマでした。
― そのコンセプトでこんなパフォーマンスされたら勝てる気がしない!
そうなんですよ。断トツで優勝して、どうしたら勝てるんだろうってみんな思いました。
この家族はミスも割りかし少ないし、パフォーマンスのアイディア的にも面白かったんですよ。
― 一昨日もちょうど近くのショッピングモールで子供達の大会やっていましたよね。
そうです。バトルっていうお互い一対一でステップを魅せ合う競技の大会をやっていました。こんな感じで。
― おぉ。迫力ありますね。
この試合が一番怖かったですね。ほんと怖かった。
僕こんな煽り方とか全く教えてないですし、練習でもお前等そんなにヒートアップしないだろう、どこでそんなの覚えてきたのって(笑)
そしてこの大会の決勝はいつの間にか男子対女子みたいな雰囲気になってて。どっちも応援が凄かったし、お互いかなり良い演技をしたんですよ。
接戦でしたが優勝したのは女の子でした。発表の瞬間、周りで戦いを見守っていた他の子たちが皆がわぁって駆け寄っていって…。
あ、だめだ。これ見ると未だに泣いちゃいますね。
この大会で知り合った子たちがこんなに仲良く…。だめだ泣いちゃう。
― 日高さんが居なかったらこの場は無かったですものね。
いやぁ。このシーンは泣いちゃいますね。
僕この時現場ではなるべく皆を見ないようにしてますからね。泣いたら運営が出来なくなると思って。
なるべく見ない!見ないぞ!って。
単にファンなんですよ。ダブルダッチの。
― 大会もクラブも、みんな笑顔なのがすごく素敵でした。
出来る限りアットホームな感じにしたいなぁと思いながら場を作っています。
ダブルダッチはもともと教育的要素が大きいスポーツなんです。
ニューヨークの警察官がストリートにあふれた子供達が非行に走らないように何かスポーツは出来ないかってことが始まりなので。だからアットホームにしたい。
― 今後の構想はありますか?
ようやく全種目の大会を北海道内で出来るような環境が整ってきたくらいので、まだ道半ばどころか三丁目くらいです。
北海道ではまだ50人くらいの規模なので、もっと500人とか5000人とかになって、色んな人に知ってもらいたいのが一番でかいですね。
そうする為には僕一人じゃ教えきれないので、指導者になれる人材育成が北海道のカルチャーとしての近々の課題です。
でもとにかく趣味としてダブルダッチ楽しんでくれる人が増えればいいなぁって。
365日どこかしらで縄が回ってるっていう環境を作りたいんです。
まあ単にファンなんですよ。ダブルダッチの。
取材を終えて
「跳びましょう、大丈夫ですよ」
そう励まされ、日高さんの回す縄に思い切って飛び込めば、運動不足の私たちでも2本の縄を気持ちよく跳ぶことが出来ました。
昔から運動が苦手でも、日頃から運動不足でも、大人でも子供でも跳んでる時は自然と笑顔になれる。
取材で伺ったお話を、その場で体感することが出来ました。跳ぶのって楽しい!
ダブルダッチで笑顔の輪を広げ続ける日高さんのこれからに注目です!
私たちは誰もが自分の好きを大切にできる、他人の”好き”を尊重しあえるような寛容さがある世界を目指して、こつこつコンテンツを作っていきます。